現在、日本で定年を迎えているいわゆる団塊の世代の方々は、上野動物園のパンダブームやNHKスペシャルのシルクロードをリアルタイムで経験した方々です。中国の歴史や文化に興味を持ち、中国に対してプラスの印象を持つ方も少なくありません。
そして定年退職後に時間に余裕ができ、満を持して長年の夢だった中国留学を実現される方々が確実に増えています。
中国に留学されたシニアの方々は総じて楽しい留学生活を過ごしてらっしゃいます。もちろん、食べ物や習慣など文化の違いはあります。若い留学生のペースについていけず戸惑うこともあるでしょう。ですがシニアの方々にはそれらを受け入れる度量と寛容さがありますので、しばらくするとそういった違いにも慣れ、ご自身に合った生活ペースを確立し、機嫌良く中国での生活を過ごされるようになります。
しかし、シニアの方々が留学するにあたって一つの、そして非常に大きな壁があります。それは年齢制限です。中国の大半の大学は語学留学生の年齢の上限を60歳としています。日本の定年退職者はすでに60歳を過ぎているため、これらの大学には入学することができないのです。
これらの中国の大学に対して少なからずのシニアの方々は「なぜ門戸を閉ざすのか」、「年寄り扱いするな」と憤慨されます。しかしその憤慨は筋違いです。
確かに日本の60歳はお元気です。なにせまだ現役で働ける年齢なのですから。しかしそれは日本の話です。中国の大学が対象としているのは日本人だけではありません。日本人だけのことを考えているのではなく、60億の地球人すべてを考えた上で年齢制限を設定しています。そして我々1億2千万の日本人は極めて特殊な地球人なのです。
この表はWHO加盟194ヶ国の平均寿命をまとめたものです。平均寿命が80歳を超えているのは世界トップ84歳の日本を含めて28ヶ国です。ですが平均寿命が60歳以下の国も28ヶ国あり、65歳以下も含めると50ヶ国に達します。
つまり、日本人は60歳や65歳はまだまだ元気だといいますし事実元気ですが、それは日本も含めた世界の一部の国での出来事であり、194ヶ国中の50ヶ国、実に世界の25%以上の国々では60歳や65歳というのは死んでいておかしくない年齢なのです。
中国は大半の大学で年齢制限を60歳、ごく一部の大学で65歳と定めていますが、これは世界の25%以上の国々に対して、死ぬ間際の人や5年以内に死にそうな人にまで留学の門戸を開いているということなのです。中国の大学関係者たちは門戸を閉ざしていると憤慨されるのではなく、むしろよくやっていると評価されても良いくらいなのです。
しかしそうは言っても60歳代の日本人は十分に現役世代ですし、70歳代でも健康面で留学に支障がある方はむしろ少数派です。世界的に見るとマイノリティの日本のシニア層ではありますが、中国留学への道が開かれても良いはずです。
そこで「中国留学情報」では2008年から中国各地の大学に足を運び日本のシニア層の実情を説明し、年齢制限の緩和を訴えてきました。2008年当時はほぼすべての大学で年齢上限は60歳で、55歳や50歳という大学もありましたのでなかなか理解は得られませんでした。
ですが粘り強く何度も訪問と説明を重ねる中で、理解を示してくれる大学が徐々にではありますが増えてきました。60歳だった上限を65歳に引き上げた大学、健康診断書の提出を条件に70歳まで容認とした大学、「中国留学情報」のお客様に限り年齢制限を撤廃とした大学など様々ですが、シニアの方でもご留学いただける中国の大学は確実に増えてきています。